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セリフ選びのきほんのん

Tです。

1年生のみなさんは学祭に向けて、自分がどういう手品をするか、どんなセリフでやるべきか悩んでいるところだと思います。大いに悩みましょう。じっさい、いざ人前でやってみるのは楽しいものです。はやいとこ、この味をしめてもらって、手品沼にはまっていただきたいのです。ただし当然そこ(人前での演技)に至るまでの思考錯誤は必要です。このセリフ選びシリーズの記事によって、その手伝いができればよいと思っています。

さて、ここからは前回の記事でいうところの『マジック部分』にしぼって、書き方のヒントをお教えします。

この記事は、オレンジ君が「きほんのき」で書いてくれたことを掘り下げる内容になります。もう一度先の記事に戻って読み直してみてもいいかもしれません。あの記事では、「自分が何をやろうとしているか理解すること」「一貫性」の重要さを訴えていました。
一貫性を保つにはどうすべきか? それはゴールから逆算して考える、ということです。

結論から言って手品のセリフは、ある一点をゴールに据えて、そこめがけて語られていきます。そのゴールとは、言わずもがな、『現象』です。何が起きるのか? ということをまず念頭に置くと、逆算的にしゃべるべきことが導かれてきます。「自分が何をしようとしているか理解する」のはそのためです。

ここで場合分けが発生します。「演者はその現象が起きることを知っているのかどうか?」です。これによってセリフや演技に大幅な差が生まれますが、「どんな現象が起きるのか知らない場合」というのは「きほんのん」というより「おうようのお」みたいな気がするので今回は省きましょう。ただしサカートリックを演じる場合はこういうことに気を払わなければいけない(かもしれない)、ということも念頭に置いてください。

さて、手品の現象というのは「○○なのに、××」という構文(?)で考えることができます。例えばトライアンフの不思議さは「裏表ぐちゃぐちゃに混ぜたはずなのに、揃った」というところにあるし、アンビシャスカードなら「カードを中に差し込んだはずなのに一番上から出てきた」、ということになります。ほかにカラーチェンジやバニッシュ(消失)などの現象は、ふつうカードやコインはたちどころに消えたり変化したりしない、という自明な一般常識が前半部分(○○なのに)に入ります。

この前半と後半の対比が鮮やかであればあるほど驚きや不思議さが生まれてきます。そのうえで、「現象を見据えて語られるセリフ」というのはつまり、「○○なのに」という前提をきちんと理解してもらうことだとも言えるでしょう。途中の状況がどうなっているかをお客さんが集中していないと、結果が分かっても驚くべきポイントが分かりにくいはずです。

抽象的な説明だと分かりづらいので、具体例として「ジェミニ・ツインズ」を考えます。1年生のかたは双子のあれ、とか言った方が通じるかもしれません。2種類のメイトカード(ペア)が揃ってしまう、上手く演じるとお客さんの反応もよい名作です。

ところで、現象に至るまでの手品の「作業」というのは……文字通り、単なる「作業」です。この「作業」は本当なら大して面白くもないし、いつまで続くか分からない行為をとつぜん見せられても興味が持てないのは当然です。まず最初に、「どういう結果が起きるのか、何をやろうとしているのかほのめかす」ということをしましょう。

ジェミニ・ツインズはいろいろな演出が考えられるので、セリフも様々な場合がありますが、例えばこんなのはどうでしょう。

「今日はお客さんに手伝っていただく手品をいくつかやろうと思っています。ですからまずは、お客さんの勘が鋭いかどうか、私との相性がいいかどうかをトランプを使って確かめてみましょう。この実験が成功したら、今日の手品はうまくいきそうな気がします」

先にこう言っておくだけで、お客さんの興味や関心が変わってくるでしょう。

サーストンの三原則(ここテストに出るよ!)で、「現象を先に言うな」という教えがあります。そのものずばり起きることを説明してしまうと、意外性は消えてしまって面白くありません。しかし、ほんの少しだけほのめかすことは有効です。むしろそれをまったく省いてしまうと、何を見せられているのか理解できずに場合によってはお客さんがいら立ってしまうかもしれません。何をしたいのか、大まかに言っておきましょう。

さて、実演に入りました。ジェミニ・ツインズで観客に理解させなければならない前提は、だいたい2つと言っていいでしょう。「よく混ぜられたばらばらなカードであること」「観客は自由な位置でストップをかけた(そこに表向きでカードを差し込んだ)こと」です。

これを、どの段階でどれくらい伝えるべきなのか、というさじ加減がまた難しいのですが、それはもはや記事で伝えきれる技術ではありません。もちろん、学祭指導のときに具体的な実践を通して、上級生が優しく丁寧に(たぶん)教えてくれると思うので安心してください。また、手品を演じ慣れてくると、このへんの感覚が自然に育まれてきます。

もちろん、手品を演じながら、どういうことを観客に伝えておくべきか考えてその場で適当に喋る、という技術は手品を始めたてのみなさんには無理のある話です。ですから、とりあえずセリフを書きましょう。書きながら、「ゴールはどこにあるのか」をきちんと理解して、「そのゴールを見据えて伝えておかなければならない前提」は何か考えてみて下さい。先の例で言うと、ジェミニ・ツインズなら「ばらばらなカードであること」「自由な位置でストップをかけたこと」はきちんと言わなきゃな、というところを押さえてほしいのです。そこまでたどり着けたら少なくとも、友達に見せるには十分なレベルには達している……かも、しれません。

ちなみに、この「前提」を確認するセリフを強調していくと、それは次第に、どのような現象が起きるか――つまり結末の「ほのめかし」のようなものに接近していく、ということだけ指摘しておきましょう。ジェミニ・ツインズのクライマックス、2枚の裏向きのカードをさあ表向きにしようというところで、「このトランプは最初に混ぜてもらったのでバラバラですよね? どこでストップされてもおかしくなかったわけです。お客さんも、特に深い意味はなく、なんとなくあのタイミングでストップしただけのはずです。ですから、この(手に持った)カードの組み合わせは、ふつうなら、全然ばらばらでおかしくないですよね」と言ったら、それはもはや反語的にクライマックスを説明しているようなものです。頭の回転が鈍い人を除けば、たいていどんな結末が待ち構えているか想像がつくでしょう。

演技のテンポも考え、どれだけの情報を与え、どれだけの結末を予感させるか……というところまで逐一考えられるようになったら一人前と言えるかもしれませんが、そこまでは求めません。先にも言ったように、とりあえずこの記事の中身を踏まえてセリフを書いてみたら、ちょっとは筆も進みやすいんじゃないかと思います。

結論:まあ、とりあえず、台本を書きましょう。話はそれからだ。

これで「きほん」三部作は終わったので、どなたか「応用のお」を書いてくださるんですよね? 演出にまつわる話とか知りたいです!
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セリフ選びのきほんのほ

こんにちは、せぶんです。

セリフ選びのきほんのほ、でいいのかわかりませんが、少し実践向けの話をしたいと思います。今回の趣旨はとりあえず書いてみよう、ということです。

きほんのきはこちら

今回はアンビシャスカードのセリフを作ってみましょう。

現象は『お客さんにサインを書いてもらったカードをデックの中に入れて、指を鳴らすと上がってくる。もう一度中に入れてもやっぱり指を鳴らすと上がってくる』です。使う技法はテ○ルト、DLです。


さて、みなさんには学祭に向けて3つの文章を考えてもらいます。

一つ目は、冒頭のあいさつ。これは自己紹介ですね。名前、これから何をするか、その他もろもろ。落語のマクラみたいな感じでできると強いです。

二つ目は、お手伝いをお願いするセリフ。

三つ目はマジック部分。これが本日の趣旨になります。



まずは冒頭のあいさつですが、僕よりうまい人がいると思うので任せたいです。任せていいよね?とりあえずテンプレみたいなのを置いておきます。

「こんにちは。マジシャンの○○と言います。よろしくお願いします。本日はこちらのトランプを使って不思議なものをお見せします」

所属、学年とかを盛り込んでもいいし、前に演者がいればその人の演技と絡めて何か話してもいいです。例えば、「前の方はどんなマジックしてました?」と聞いて、カード当てだったら「では次はカードを当てないマジックをお見せします」とかそんな感じです。結構アドリブ力が試されるのでテンプレの部分だけは作っておいた方が良いと思います。



お次はお手伝いをお願いするセリフです。手伝ってもらうのにも色々なタイプがあって、例えば、カードを引いて覚えてもらうだけの場合には名前を聞く必要はないと僕は思っています。今回はアンビシャスカードということでサインを書いてもらうので、名前を聞いていくスタイルの文章を考えます。

「どなたか一人お手伝いいただきたいのですが……よろしいですか?ありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいですか?□□さんですね。それではみなさん、□□さんに大きな拍手をお願いします!」

テンプレはこんな感じでしょうか?「どちらから来ました?」とか、学園祭中なので「YOUはどうしてこの学園祭に?」とか「他に何か面白いとこありました?」とか色々話せることはあると思います。そこはアドリブになるのでとりあえずテンプレ部分だけは確保しておきましょう。



では三つ目のマジック部分に移ります。いきなり書けと言われても困ると思うので最初は全ての動きを説明する感じで書き出していきましょう。

「早速ですが、□□さん、何か好きなカードはありますか?……ふつうはないですよね。では表向きにカードを広げていきますので適当なカードを一枚お選びください。ハートの7でいいですか?それではこちらのサインペンでハートの7に□□さんのお名前を大きく書いていただいていいですか?」

カードを選ばせてサインさせるところはこんな感じでしょうか。べたですが前田知洋さんの「前にハートの7にサインしたことあります?ないということは、これは世界に一枚だけのカードということになりますね」といったセリフを盛り込んでもいいと思います。

次にアンビシャスカード部分のセリフです。

「このハートの7をデックの中に入れて揃えます。中に入ったということはハートの7は一番下や、一番上には当然ありません。でも私が指を鳴らして、一番上のカードをめくるとハートの7が一番上に上がってきます。もう一度やってみましょう。ハートの7をひっくり返して、確かにデックの真ん中に差し込んで揃えます。でも私が指を鳴らして、一番上のカードをめくるとやっぱりハートの7が一番上に上がってきます」

全ての動きを説明するとこんな感じでしょうか。ではここから文章を添削していきます。

まず、セリフには大きく分けて4種類あるという話から始めます。その4つは、『言っていいセリフ』と『言わなくていいセリフ』と『言ってはならないセリフ』と『言わなければならないセリフ』です。『言わなければならないセリフ』以外は基本言わなくてもいいと僕は思っています。でも言わなければならないセリフを抽出するという行為は慣れないと大変なので、『言わなくていいセリフ』と『言ってはならないセリフ』を削っていきましょう。

まず『言ってはならないセリフ』にはいろいろありますが今回は2つだけ。
① 専門用語
② シークレットムーブ
この2つです。今回の場合①はデックなどがそれに当たります。②はシークレットムーブを行っていることを正直に言う人はもちろんいません。つまり嘘をついている部分がそれに当たります。今回の場合は2行目の「一番上のカードをめくると」が該当します。

ではこの2つを修正してみましょう。
「このハートの7をトランプの中に入れて揃えます。中に入ったということはハートの7は一番下や、一番上には当然ありません。でも私が指を鳴らして、カードをめくるとハートの7が一番上に上がってきます。もう一度やってみましょう。ハートの7をひっくり返して、確かにトランプの真ん中に差し込んで揃えます。でも私が指を鳴らして、一番上のカードをめくるとやっぱりハートの7が一番上に上がってきます」

こうなります。次に『言わなくていいセリフ』を削っていきます。『言わなくていいセリフ』は簡単に言うと自明なことです。例えば、「トランプの中」は「中」だけでも勘違いする人はまずいないでしょう。また、自明だと思ってほしいことも含まれます。例えば前述の「一番上のカードをめくると」という部分は全てを省略することで、「一番上のカードをめくっているんだな」と観客に思ってもらうことができます。このような『言わなくていいセリフ』を()でくくっていきます。

「このハートの7を(トランプの)中に入れて(揃え)ます。中に入ったということはハートの7は一番下や、一番上には当然ありません。でも(私が)指を鳴らして、(カードをめくると)ハートの7が一番上に上がってきます。もう一度やってみましょう。ハートの7を(ひっくり返して)、確かに(トランプの)真ん中に差し込んで(揃え)ます。でも(私が)指を鳴らして、(一番上のカードをめくると)やっぱりハートの7が一番上に上がってきます」

こんな感じでしょう。ここで、指を鳴らすのも自明なのでは?と思った方もいると思います。でもこれを削ると何か変だなと気付くはずです。ハートの7が上がってくる理由付けとして指ぱっちんが使われているということですね。この「指を鳴らして」というセリフこそが『言わなければならないセリフ』の一つとなります。

では一旦()の中身を消して整理してみましょう。

「このハートの7を中に入れます。中に入ったということはハートの7は一番下や、一番上には当然ありません。でも指を鳴らすと、ハートの7が一番上に上がってきます。もう一度やってみましょう。ハートの7を確かに真ん中に差し込みます。でも指を鳴らすと、やっぱりハートの7が一番上に上がってきます」

完成です。このセリフで演じてみてしっくりくればセリフ作りは終了となります。

でもしっくりこない場合もあります。ここは間を取りたいだとか、もっと削らないと間が空いてしまうといった理由です。前段で()でくくっていったわけは間を取りたいときに復活させやすいようにという配慮です。逆に間が空いてしまう場合は『言ってもいいセリフ』を削っていきます。

「ハートの7を中に入れます。一番下や、一番上には当然ありません。でも指を鳴らすと、一番上に上がってきます。もう一度やってみましょう。ハートの7を確かに真ん中に差し込みます。でも指を鳴らすと、やっぱり上に上がってきます」

例えばこんな感じです。残っているもののほぼ全てが『言わなければならないセリフ』だと思ってもらっていいです。このような感じで自分の演技の尺と合わせてセリフを作っていきます。


どうだったでしょうか。皆さんのセリフ作りの参考になれば幸いです。
学祭に向けて頑張りましょう。


では僕は明日のマジックマーケット楽しんできます!

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