2020.11.23
種明かしYoutuberについて その1
去年あたりから種明かしYoutuberを見てマジックを始めた経験者がサークルに入ってくるようになりました。個人的な話になりますが、僕は種明かしYoutuberに関してはそこまで否定的ではありません。正確には、種明かしYoutuberが動画を出すことについては否定的ですが、上がってしまったものは仕方がないので、利用できるだけ利用してやれば良いという派閥です。ただ1つだけ、そこに浸かっている間はあんまり上手くならないとは思います。そこからいかに脱却するかが鍵です。これから先日お会いした種明かしYoutuberからマジックを始めた方の話をしますが、この話は彼を揶揄するものではないということを予めご了承ください。
先日、種明かしYoutuberを見てマジックを始めた方とお会いして話をしました。彼はなかなかに良いセンスをお持ちで(僕は彼の動きを見て影響を受けているであろうYoutuberの方を看破しましたが)、きちんと上手い人の動画を見て学んでいました。それにもかかわらず、基礎ができていませんでした。僕は彼にカードを中程に差し込み揃えながらインジョグを作る方法を教えたのですが、カードを揃える時に右手親指が人差し指の横に揃った状態なのです。本来右手親指はデックの手前サイドに付くはずで、そうしないとやりづらい技法がわんさかあります。これは推測ですが、ビドルグリップが定着していないためだと思いました。案の定、彼はビドルグリップという言葉を知りませんでした。
僕は初心者に教える時に、まず初めに『ディーリングポジションとビドルグリップ以外の持ち方はしないから、確実にこの2つを「できる」ではなくて「している」状態にしてください』と言います。ディーリングポジションなんて簡単だと初心者でも思うことでしょう。しかし、4枚くらいの小数枚になると崩れる人が必ず現れます。そして、ビドルグリップは左右逆でやってみるとわかると思いますが、思いの外安定しない技法です。この2つは絶対に押さえておきたいし、そうしないと何も始まりません。
ビドルグリップを教えているYoutuberがどれほどいるのか興味を持って検索したのですが、ビドルグリップ単体に焦点を当てていそうな動画は4つだけでした(2020年11月23日時点)。その内1つはサムネイルで微妙だとわかりました。残り3つは見ていないのでわかりませんが、それでもたったの3つです。そして、そもそも初心者がビドルグリップで検索するなんてまぁありえない話です。つまり初心者には基本辿りつけません。タイトルにビドルグリップを入れずに紹介している動画もあるとは思いますが、タイトルに入っていない時点でそこまで重要視していないことは明白でしょう。
どうしてこのようなことにになってしまうのかについては、種明かしYoutuberが単純に教えるのが下手という結論でほぼ間違いないと思います。Youtuber達は見えない相手に教えることがどういうことなのかわかっていないのです。対面だったらビドルグリップができていないことを指摘することはできるでしょう。でも相手が見えないからには、先回りでビドルグリップの大切さを説かなければいけないのです。この他にも、彼はエルムズレイカウントの名前を知りませんでした。技法は知っているのです。でも名前が定着していないのです。エルムズレイカウントを使う動画内でその名を出さないなんてことはまず無いはずです。でもその名前を定着させるために必要なことをYoutuber達はわかっていません。上手ければ良いわけではないのです。自分は上手いし、これは動画だから見て真似すればある程度できるだろうなんてあろうはずがありません。そんなことができるならプロマジシャンのDVDを見ている我々はとっくにプロ顔負けの演技をしています。人に教えるということを舐めないで欲しいと思いました。
最初に言った通り、マジックを始める第一歩としてはありだと思っています。でも第一歩だけですよ。本当に。初心者の方は今すぐにでも書店に行って、もしくはマジックショップのサイトを検索して良い教材を手に入れるべきだと思います。良い教材を見つけるのも大変だと思うので、それをまとめた記事も書きたいですね。探せば既にありそう。
タイトルをその1にしていますが、その2が出る予定は今のところありません。いつかまた思うところができたときのためにナンバリングしておきます。
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2020.11.12
DLC版『52Hz』販売のお知らせ
こんにちは。ムナカタヒロシです。
今年5月開催のマジックマーケットオンラインにて頒布したレクチャーノート『52Hz』についてですが、このたびDLC版の販売を始めます。
↑一応この記事にも載せたものの、PDF版には付属しない表紙画像。※画像はイメージです
ご希望の方は以下のBASEショップにてお買い求めください。PDF、モノクロ、本文のみ100ページです。なお現状はクレジットカード決済のみとなります。
マジケで頒布した際の値段よりやや割高となっていますが、既にリアル本を持っているという方には割引クーポンを用意してありますので、販売ページの商品説明をよくお読みください。
ちなみにこのDLC版、誰も気づかないような細かい部分の修正(※)以外はほぼリアル本通りなのですが、1か所だけ変更点があります。実はリアル本には先の宣伝記事やレビューなどでも触れられていないおまけ記事が付属していました。この記事については筆者の意向によりカットしております。何卒ご了承ください。
(※)──3か所のダブルクォーテーションの上下を直し、カッコの前後でダブっていた句読点を削るなどしました。
2020.11.09
レビュー:Toy Box Vol.12
こんばんは。
本日はトイボックスサービスさんが出版している作品集、Toy BoxのVol.12を紹介します。
基本的に僕のレビューは買う前に気になるだろうなと思った点を中心に書いて、買うかどうか参考にしてもらうというスタンスなのですが、はじめに言っておくとこの作品集はマストバイです。真田さんの3to1ロープという作品が載っているのですが、これがまぁほぼ確実にレパートリー入りします。
この3to1ロープはゆうきともさんのレクチャー後の打ち上げで見せていただいたのですが、その当時ものすごい衝撃を受けました。簡単に言うと、3本のロープを結んで1本のロープにした後で、結び目が取れて本当に一本のロープになるのですが、結び目を取るところを2回とも見せられます。基本の3本ロープの一歩先を行くディセプティブさです。ここまでビビッときた手順はお客さんが何回切ってもロープの長さが揃わない手品以来です。こちらは僕のキャラクターには合わなかったので(ロープを消耗するのと、1人で練習するのが辛いなどの理由も重なり)断念しましたが、3to1ロープはキャラを選びません。しかもそこまで難しくないとくれば言うことなしです。
レクチャーから帰宅し、すぐに調べてこの作品集にはたどり着いたのですが、取り扱っているショップが見当たりませんでした。知人からトイボックスサービスというところに問い合わせれば良いと教えていただき、ようやく手に入れることができました。下記サイトからお問い合わせしてもらえれば大丈夫だと思います。
ちなみに3to1ロープは庄司タカヒトさんもショーで演じられていました。プロも認めるルーティンです。ロープマジックを嗜んでいる方なら知っておいて損はないし、ロープマジックしていない方はこれだけで1ルーティンの3分の1は確保できます。祖父の遺言でロープマジックをやってはいけないと言われている方以外は絶対に買って欲しい、いや、やっぱり知られすぎても困るので買わなくても良いような気がしてきました。
これ以外にもいくつかマジックが載っているのですが、個人的に良いと思ったのは、同じく真田さんのインプロンプト・ドロップシルクです。これはシルクがないので練習できていないのですが、将来的にはやってみたいマジックです。簡単に現象を説明すると、ロープの三箇所に結んだシルクが、観客の指定した順番に解けて落ちていきます。DVDが付いてきて実演が見られるのですが、とても不思議でした。
後は、「おばあさんの首飾り」から現在までの、2本ロープによる脱出(貫通)現象の発展について、石田隆信さんの詳細なレポートが付いています。20ページを超えています。石田コラムには載っていない情報です。これだけでもう欲しくなってきませんか?
ということで、トイボックスの回し者ではないのですが、ちょっと熱が入ったレビューになりました。アンダーグラウンドとまでは行きませんが、情報を知らないと入手しづらい作品集ということで、興味を持った方は是非お問い合わせしてみてください。