2020.04.28
レビュー:52Hz
こんにちは、せぶんです。
マジックマーケットも近づいてきましたので、東北大学クロマドウ会から販売されるレクチャーノートの先行レビューをしたいと思います。今回はムナカタヒロシさんの『52Hz』です。とにかく文量がすごく、読み物としても面白いです。こんなまえがきとあとがきを書けるようになりたい。トリックも粒揃いで、特に第2章は全部しゅごい(語彙力の崩壊を感じる)。とりあえず全トリックについて簡単に感想を書きましたので、販促に繋がれば良いなぁと思います。
第1章 Traveling
カードを用いて演じる現象の中でも、特に移動に主眼を置いたトリックを集めました。
Split(*) 4エースを用い、観客の自由なコールに応じてカードトゥポケットを行います。パームを使いません。
素朴な感じで良い手順です。ケースバイケースなのですが、明確なバッドパターンは存在せず、いずれにせよ衝撃的な現象を起こせます。
Vol-de-Nuit Hofzinser(*) 筆者流のホフジンザープロブレムの解法です。本書では唯一ギャフを使う手順ですが、ありふれたギャフなので手に入れやすいはずです。
1段目がいい感じに効いて、ギャフカードの存在を覆い隠してくれます。マジシャンが見ても、ボーッとしてたら普通に騙されると思います。
Double Date テンヨーのディーラーズアイテム『サプライズ手帳』にトリビュートした手順です。2人の観客のカードが手帳に書かれた数字に従って現れます。
めちゃめちゃ骨のある手順。これだけで1ルーティンできています。サプライズ手帳をお持ちの方は是非チャレンジを。
第2章 Mental
いわゆるメンタルマジック寄りのトリックを集めてあります。
Power of ‘JUNISHI’ 十二支のシンボルをすべて半分に切った「絵合わせ」の山があります。この中から観客に好きなカードを選んでもらうと、その結果が完璧に予言されていることが分かります。
個人的イチオシです。2つの原理を組み合わせたものになるのですが、この2つの原理は1950年代には発表されており、今日に至るまで誰もこの2つの原理を合わせなかったのであれば、この原理の発展は70年分遅れたことになります。しかし安心してください。バリエーションの方は今後100年くらい誰も思いつかなそうなものを著者が発見してくれました。このトリックの発表でこれらの原理は70年の空白を取り戻すどころか、100年先まで発展したと言っても過言ではないでしょう。Power of JUNISHIを初めて見せてもらったときは、自分が思い付きたかったという悔しさもありましたが、バリエーションの方はなんで思いついたの?って正直に思いました。原理好きな人は絶対に楽しめると思います。あと、普通に低負担で不思議で楽しいトリックなので、実用的なものを欲している人にもお勧めです。
Ariadne 観客に手伝ってもらい、裏表バラバラな二十枚強のパケットを作ります。演者は視覚的情報に頼らずカードの表と裏、赤と黒を判別します。借りたデックで演じられます。
これも2つの原理を組み合わせたもので、知らないととても不思議です。個人的には、このトリックはまだ発展性がありそうな予感があり、これからにも期待のかかる作品です。もしかしたらそれを発見するのはこれを読んだあなたかもしれません。
The Equi-voyance Test(*) よく混ぜたデックから、無作為に3枚のカードを抽出し、どのカードを使うか観客が決定したうえで透視能力の実験を行います。観客はカードを当てることができませんが、演者は100%正確に言い当てます。借りたデックで演じられます。
借りたデックで演じられる、ヘビーな手順。初段で止めればそこまでヘビーでもない気がしますが、序盤の動きをとても滑らかに行う必要があります。ちなみに著者はめちゃくちゃ上手いです。
第3章 Playing
箸休めのような章で、遊戯的に楽しんで作ったトリックが解説されています。
Fake Monte Move(*) モンテムーブに見せかけてモンテムーブを行わない、マジシャンフーラーです。
怪文書に載せられていた作品。マジシャンフーラーなのかは少し疑惑がありますが、でもまぁ面白いから見せちゃうってタイプの作品。手品始めたての人を引っ掛けるのには良さそうです。
Psychokinepick(*) マジシャンが手をかざすと、デックのトップカードがひとりでに動き始めます。動かすカードは52枚中のどれでもよく、演じる前後でデックも手もあらためることができます。
結構いい感じに動きます。覚えておくと飲み会とかで重宝するかも。
Rashomon Monte(*) 3カードモンテのデモンストレーションを行いますが、なかなか当たりません。演者は観客に暗示をかけることで惑わせているのだと説明します。より深く暗示をかけると、手伝い役の観客は、カードが表向きになっているにも関わらず当てることができなくなります。
サークルの新入生を感動させた、怪作中の怪作。発想がとても面白いので、読むだけでも満足できる作品。誰かに見せているところを見るのはとても楽しいです。
第4章 Et Cetera
1章から3章に含まれない現象のカード奇術たちです。
Sinking Aces(*) エース4枚のうち、観客のコールに応じて選ばれたエースがマットを貫通します。
Splitもそうですが、これも素朴な感じの良い手順。著者の好みがよくわかるタイプの作品です。
Closed Marriage-Brokers 演者と観客とでQとKのペアを作っていきます。確認してみるとどのペアもスートが不一致であることが分かりますが、ジョーカー2枚のあいだを通すことですべてのペアのスートが一致していきます。ロイ・ウォルトンのマリッジブローカーズをすっきりとアレンジしました。
『THE堅実』なハンドリングです。僕もマリッジブローカーズを演じる時はこのハンドリングを重宝しています。
Awkward Rising ケン・クレンツェルのライジングカードをコメディ/サカー風に演出づけた手順です。
何回かSNSに上がっているので見た方もいると思います。あのコミカルな動かし方をするのはちょっと難しいですが、練習する価値はあります。
第5章 Extra
おまけの章です。非カード奇術や、カード奇術にまつわる記事など。
Crystal Clarity テンヨーの『クリスタルボックス』にトリビュートした手順で、意外な現象が連続して起こります。
クリスタルボックスの新しい使い方です。僕もハンドリング考えるのを少し手伝いました。流れるように現象が起こるので見ていて楽しい作品です。裏の動きも全部流れるように連動するので、この作品集の中でも屈指の難易度だと思います。クリスタルボックス自体が素晴らしいマジックなので持ってない方は購入しましょう。
とにかく僕のオススメはPower of ‘JUNISHI’です。道具一式作ったらこれだけで3000円は確実に取れるレベルの作品です。これが2500円で他にも12作品ついてくるのだから、これ以上の言葉は必要ないでしょう。是非お買い求めください。
マジックマーケットも近づいてきましたので、東北大学クロマドウ会から販売されるレクチャーノートの先行レビューをしたいと思います。今回はムナカタヒロシさんの『52Hz』です。とにかく文量がすごく、読み物としても面白いです。こんなまえがきとあとがきを書けるようになりたい。トリックも粒揃いで、特に第2章は全部しゅごい(語彙力の崩壊を感じる)。とりあえず全トリックについて簡単に感想を書きましたので、販促に繋がれば良いなぁと思います。
第1章 Traveling
カードを用いて演じる現象の中でも、特に移動に主眼を置いたトリックを集めました。
Split(*) 4エースを用い、観客の自由なコールに応じてカードトゥポケットを行います。パームを使いません。
素朴な感じで良い手順です。ケースバイケースなのですが、明確なバッドパターンは存在せず、いずれにせよ衝撃的な現象を起こせます。
Vol-de-Nuit Hofzinser(*) 筆者流のホフジンザープロブレムの解法です。本書では唯一ギャフを使う手順ですが、ありふれたギャフなので手に入れやすいはずです。
1段目がいい感じに効いて、ギャフカードの存在を覆い隠してくれます。マジシャンが見ても、ボーッとしてたら普通に騙されると思います。
Double Date テンヨーのディーラーズアイテム『サプライズ手帳』にトリビュートした手順です。2人の観客のカードが手帳に書かれた数字に従って現れます。
めちゃめちゃ骨のある手順。これだけで1ルーティンできています。サプライズ手帳をお持ちの方は是非チャレンジを。
第2章 Mental
いわゆるメンタルマジック寄りのトリックを集めてあります。
Power of ‘JUNISHI’ 十二支のシンボルをすべて半分に切った「絵合わせ」の山があります。この中から観客に好きなカードを選んでもらうと、その結果が完璧に予言されていることが分かります。
個人的イチオシです。2つの原理を組み合わせたものになるのですが、この2つの原理は1950年代には発表されており、今日に至るまで誰もこの2つの原理を合わせなかったのであれば、この原理の発展は70年分遅れたことになります。しかし安心してください。バリエーションの方は今後100年くらい誰も思いつかなそうなものを著者が発見してくれました。このトリックの発表でこれらの原理は70年の空白を取り戻すどころか、100年先まで発展したと言っても過言ではないでしょう。Power of JUNISHIを初めて見せてもらったときは、自分が思い付きたかったという悔しさもありましたが、バリエーションの方はなんで思いついたの?って正直に思いました。原理好きな人は絶対に楽しめると思います。あと、普通に低負担で不思議で楽しいトリックなので、実用的なものを欲している人にもお勧めです。
Ariadne 観客に手伝ってもらい、裏表バラバラな二十枚強のパケットを作ります。演者は視覚的情報に頼らずカードの表と裏、赤と黒を判別します。借りたデックで演じられます。
これも2つの原理を組み合わせたもので、知らないととても不思議です。個人的には、このトリックはまだ発展性がありそうな予感があり、これからにも期待のかかる作品です。もしかしたらそれを発見するのはこれを読んだあなたかもしれません。
The Equi-voyance Test(*) よく混ぜたデックから、無作為に3枚のカードを抽出し、どのカードを使うか観客が決定したうえで透視能力の実験を行います。観客はカードを当てることができませんが、演者は100%正確に言い当てます。借りたデックで演じられます。
借りたデックで演じられる、ヘビーな手順。初段で止めればそこまでヘビーでもない気がしますが、序盤の動きをとても滑らかに行う必要があります。ちなみに著者はめちゃくちゃ上手いです。
第3章 Playing
箸休めのような章で、遊戯的に楽しんで作ったトリックが解説されています。
Fake Monte Move(*) モンテムーブに見せかけてモンテムーブを行わない、マジシャンフーラーです。
怪文書に載せられていた作品。マジシャンフーラーなのかは少し疑惑がありますが、でもまぁ面白いから見せちゃうってタイプの作品。手品始めたての人を引っ掛けるのには良さそうです。
Psychokinepick(*) マジシャンが手をかざすと、デックのトップカードがひとりでに動き始めます。動かすカードは52枚中のどれでもよく、演じる前後でデックも手もあらためることができます。
結構いい感じに動きます。覚えておくと飲み会とかで重宝するかも。
Rashomon Monte(*) 3カードモンテのデモンストレーションを行いますが、なかなか当たりません。演者は観客に暗示をかけることで惑わせているのだと説明します。より深く暗示をかけると、手伝い役の観客は、カードが表向きになっているにも関わらず当てることができなくなります。
サークルの新入生を感動させた、怪作中の怪作。発想がとても面白いので、読むだけでも満足できる作品。誰かに見せているところを見るのはとても楽しいです。
第4章 Et Cetera
1章から3章に含まれない現象のカード奇術たちです。
Sinking Aces(*) エース4枚のうち、観客のコールに応じて選ばれたエースがマットを貫通します。
Splitもそうですが、これも素朴な感じの良い手順。著者の好みがよくわかるタイプの作品です。
Closed Marriage-Brokers 演者と観客とでQとKのペアを作っていきます。確認してみるとどのペアもスートが不一致であることが分かりますが、ジョーカー2枚のあいだを通すことですべてのペアのスートが一致していきます。ロイ・ウォルトンのマリッジブローカーズをすっきりとアレンジしました。
『THE堅実』なハンドリングです。僕もマリッジブローカーズを演じる時はこのハンドリングを重宝しています。
Awkward Rising ケン・クレンツェルのライジングカードをコメディ/サカー風に演出づけた手順です。
何回かSNSに上がっているので見た方もいると思います。あのコミカルな動かし方をするのはちょっと難しいですが、練習する価値はあります。
第5章 Extra
おまけの章です。非カード奇術や、カード奇術にまつわる記事など。
Crystal Clarity テンヨーの『クリスタルボックス』にトリビュートした手順で、意外な現象が連続して起こります。
クリスタルボックスの新しい使い方です。僕もハンドリング考えるのを少し手伝いました。流れるように現象が起こるので見ていて楽しい作品です。裏の動きも全部流れるように連動するので、この作品集の中でも屈指の難易度だと思います。クリスタルボックス自体が素晴らしいマジックなので持ってない方は購入しましょう。
とにかく僕のオススメはPower of ‘JUNISHI’です。道具一式作ったらこれだけで3000円は確実に取れるレベルの作品です。これが2500円で他にも12作品ついてくるのだから、これ以上の言葉は必要ないでしょう。是非お買い求めください。
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